相撲界にどっぷり浸かった外国人力士。
日本語がとことんウマイ。
来日してから24時間日本語漬け。
稽古では日本語でどやされ、買い物に行けばアジの開きの
かわりに、タタキを買ってきてしまう。
後援会の人との会話もしどろもどろ。
電話に出たら、「カメ」というのが「ハロー」の意味だと
先輩力士にからかわれ、まじめに「カメ」と電話に出て
またどやされる。
いつの間にか、会話が滑らかになり、カラオケで演歌を歌うようになる。
どっぷり浸かる=イマージョンの典型的な実践例だ。
この教育を、第2外国語の習得に取り入れて注目されたのがカナダだ。
ご存知ケベックは、フランス語も使う。
それで、英語を日常的に使う生徒に、フランス語を覚えてもらおうと
始めたのがイマージョン教育。
特徴は、フランス語を学ぶんじゃなくて、フランス語「で」学ぶ。
ちなみに、英語とフランス語はすこぶる似ている。
(それなのにフランス語が苦手なアメリカ人は、発音が苦手だから??
それとも、英語さえできればという ただの傲慢からか??)
一例を。
単語は60%も共通の語源であり、文法もほぼ同じ。
ことに語順が同じなので 英語を母国語にしているカナダ人は、
「同じ発想」でフランス語に取り組むことができる。
たとえば、
両親 parents (英語、フランス語とも同じ)
村 village (英語、フランス語とも同じ)
変える change (英語) changer (フランス語)
家族 family (英語) famille (フランス語)
英語 Robert is fatigued. (fatigued = tired )
フランス語 Robert est fatigue.
日本語 ロバートは疲れている。
これは、ラクですねえ。
それでも、このイマージョン教育をとおして、どのくらい学習に費やすかというと、
学校の授業だけで、
「基本的な知識があって、日常的なカンタンな会話ができ、
簡単な文章が読めるレベル(初級レベル)に到達するのに
1200時間」。 そ、そんなに・・・・・。
中級レベルに到達するのには初級からさらに900時間加算して 合計2100時間です。
ここでいう中級とは、「新聞や本を辞書を使いながら読め、テレビやラジオの内容を理解し、
日常の通常の会話ができるレベル」。資料元:
「Evaluating Bilingual Education: A Canadian Case Study
(バイリンガル教育を評価する カナダのケーススタディ)」
Swain M. & Lapkin S
なるほど、こんなに、費やすんですか・・・。
というより、まあ、当然といえば当然ですね。
イマージョンはどっぷり浸かるという意味ですから。
外国人力士はそれこそ起きてる間はずっとイマージョンやってるわけだからね。
1日10時間として、1年で3650時間。これで中級レベルの時間数ですね。
脱線するが、「英語で勉強する(イマージョン)」と「英語を勉強する」の
大きな違いは、「英語で考える」ことと「時間」だ。
「英語で考える」はわかるとして なぜ「時間」?
日本の学校英語を考えて欲しい。
典型的な英語「を」勉強する形態。
さて、質問。
50分授業の間、実際に英語を使っているのは何分?
多分10分程度だろう。
日本の英語教育は、この効率の悪さが、イマージョンの対極になっている。
日本の英語授業時間だけで見積もると、
多く見積もって、中学300時間、500時間の合計800時間。
こ、これだけでも初級レベルに届かない。
さらに、悪いことに、
実際の英語を使う時間は、その5分の一程度と試算すると、実質は160時間。
もっと悪いことに、英語に文法や単語がかなり似ているフランス語に比べ、
日本語は・・・。
まあ、授業時間だけで英語ペラペラってのが、土台無理なんですねえ。
で、イマージョンはホントに効果があるのかというと、英語学習においては
最高だと私は思います。
これ以上のものはない。
たとえば、静岡でこの方式で小学校からイマージョンを導入している学校は、
生徒がよどみなく英語で会話をし、ハーバードなど難関大学にも合格者を
輩出している。
まだ、サンプルは少ないが成功例でしょう。